ソン・ウォンヒョン

「まだ生まれていない赤ちゃん、こんにちは。私にお母さんになる資格があるか分からないけど、私の思いと考えを手紙に書こうと思う。少し前まで、私のお腹の中に君がいることを恥ずかしく思い、中絶することばかり考えていた。私の体に宿っている貴重な生命を軽く考え、酒やたばこ、薬などで君を苦しめたようだ。これからは、君が生まれるまで、私の体の中ですくすくと育ち、元気な赤ちゃんとして生まれてほしい。私の赤ちゃん、早く会いたい」 常習窃盗罪で少年審判に臨んだ少女(17)は、泣き出しそうな様子で手紙を読んだ。中学校在学中に家出した少女は、友人3人と共に車上狙いを繰り返し、4カ月後に逮捕された。調査を受けていたとき、妊娠17週との診断を受けた少女は、チョン・チョンホ裁判長に対し「知らない男から性的暴行を受け妊娠した。中絶したい」と打ち明けた。 だが、少女の話はうそだった。チョン裁判長の依頼を受け、青少年相談専門家のユン・ダラムさんが少女と面談した。少女はユンさんに対し、一緒に盗みを繰り返し、少年審判を受けている少年と性的関係を持ち、妊娠に至った、と打ち明けた。この話を聞いた千裁判長は苦悩した。「もし自宅に帰したら中絶するだろう。違法な中絶を許すわけにはいかない。しかし、自分が少女の親だとしたら、娘を『未婚の母』に仕立てる裁判所の処分に納得するだろうか」 少女は、元気な女の赤ちゃんを産んだ。チョン裁判長は「一つの生命を救う代わりに、少女の人生を台無しにするのではないかという思いもあったが、元気な赤ちゃんを無事に産んだとの知らせを聞き、うれしく思う。今後、幸せに生きていくことを望む」と話した。